| 吉 田: |
開き直って言えば、家なんかつくってみなければわからないんですよ。 |
| 小井土: |
先生の考え方に「つくりすぎない家」「住み手が育てる家」というテーマがありますね。最初に作りこまず、生活をしながら部分的に住みやすいようにどんどん変えていけばいいという発想の。
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| 吉 田: |
私は設計を依頼されると、依頼者の要望をすべて聞き入れます。「それはよくないからやめなさい」とは一切言いません。どんなことでも全部受けます。それで結果的には、そうではないものをつくってしまうんです。依頼者は何も言いませんよ。 |
| 小井土: |
トラブルになりませんか? |
| 吉 田: |
なりません。依頼者の要望をきちんと実現しているところもあるからです。「これをしたら、こうなる」とは言いますが、住まい方についても話しません。私自身の考えも相手の要望に対する意見も。「ただ、住んでみなさい」と言うのです。すると、きちんと、その家にあった住まい方になっていくのです。
おもしろい例があります。共働きのご夫婦が、私に家を設計してほしいとやってきました。話を聞いていると亭主が、「家はお客が来ないので、来客のことなど考えず、我々の家庭だけを考えた家で結構です」と言いました。さらに「バイオリンを弾きたいので、防音された三畳程度の部屋をつくっていただけますか」と続けました。私は「わかりました」と言って、洗面所の横に防音もせず三畳の納戸を設計しました。三畳の音楽室なんて考えられませんからね。お客様の意見に反対せず、つくってしまえばいいわけです。後日談があって、新居に入居後、休日ごとに人が集まるようになったというのです。来客があるので家の中を散らかしておけないからと、散らかっているものは納戸にしまうそうです。洗面所の脇に納戸があるおかげで、家の中を簡単に整理整頓できると喜んでいます。今まで来客がなかったのは、部屋が物であふれていて乱雑だったから客を呼べなかっただけなんですよ。きれいに暮らしはじめると、自分たちの生活ぶりを見せたくなるから、客を呼ぶようになる。おもしろいなあと思いましたよ。 |
| 小井土: |
家の中に、先生のメッセージが込められていますね。 |
| 吉 田: |
それをこの学院の教育目標にしています。学校はもう少しテクニカルですが、学院では、「空間をして何を語らしめるか」ということをテーマに掲げています。その空間に住むと、人間はどうしたくなるかを、その空間に語らせろということです。そこに最終的な問題があるかな。
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