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「つくりすぎない家」「住み手が育てる家」

開き直って言えば、家なんかつくってみなければわからないんですよ。
吉 田: 現在、私の事務所の1階で、木造建築の学校をやっています。時間がないので、ここでは隔月で1年間に6回の講義をしています。
ここでは、必ず手を動かすことを教えます。頭でいくらわかった気になっても、実際につくってみなければわからないからです。課題を出して、1ヶ月目に図面を提出させ、すべてチェックする。そしてフィードバックをして次の段階に進ませます。1年で6回行い、成績は修了と卒業にわけます。卒業生は全体の2割弱、現在25名ほどです。修了は「また来なさい」という意味です。学院もあるので、そちらに進むこともできます。学院も隔月なので月に一回ずつ学院と学校がある状況です。学院ではかなりレベルの高い教育をしています。ここは卒業というのはないので、来たければいつまででも来てよしというスタイルです
小井土: 本当にうそみたいな金額で教えていますよね。良質な住宅を少しでも増やしていきたいという先生の思いを感じます。
吉 田: 全国あちこちに工務店が存在して、地域でグループをつくっているところもあります。彼らが手がける住宅を拝見すると、「こんなものをつくっているのか・・・」いうことがあるわけです。それを見るにつけ、きちんと作り方を勉強した方がよいと思い学校をはじめたんです。


空間をして何を語らしめるか。
吉 田: 開き直って言えば、家なんかつくってみなければわからないんですよ。
小井土: 先生の考え方に「つくりすぎない家」「住み手が育てる家」というテーマがありますね。最初に作りこまず、生活をしながら部分的に住みやすいようにどんどん変えていけばいいという発想の。
吉 田: 私は設計を依頼されると、依頼者の要望をすべて聞き入れます。「それはよくないからやめなさい」とは一切言いません。どんなことでも全部受けます。それで結果的には、そうではないものをつくってしまうんです。依頼者は何も言いませんよ。
小井土: トラブルになりませんか?
吉 田: なりません。依頼者の要望をきちんと実現しているところもあるからです。「これをしたら、こうなる」とは言いますが、住まい方についても話しません。私自身の考えも相手の要望に対する意見も。「ただ、住んでみなさい」と言うのです。すると、きちんと、その家にあった住まい方になっていくのです。
おもしろい例があります。共働きのご夫婦が、私に家を設計してほしいとやってきました。話を聞いていると亭主が、「家はお客が来ないので、来客のことなど考えず、我々の家庭だけを考えた家で結構です」と言いました。さらに「バイオリンを弾きたいので、防音された三畳程度の部屋をつくっていただけますか」と続けました。私は「わかりました」と言って、洗面所の横に防音もせず三畳の納戸を設計しました。三畳の音楽室なんて考えられませんからね。お客様の意見に反対せず、つくってしまえばいいわけです。後日談があって、新居に入居後、休日ごとに人が集まるようになったというのです。来客があるので家の中を散らかしておけないからと、散らかっているものは納戸にしまうそうです。洗面所の脇に納戸があるおかげで、家の中を簡単に整理整頓できると喜んでいます。今まで来客がなかったのは、部屋が物であふれていて乱雑だったから客を呼べなかっただけなんですよ。きれいに暮らしはじめると、自分たちの生活ぶりを見せたくなるから、客を呼ぶようになる。おもしろいなあと思いましたよ。
小井土: 家の中に、先生のメッセージが込められていますね。
吉 田: それをこの学院の教育目標にしています。学校はもう少しテクニカルですが、学院では、「空間をして何を語らしめるか」ということをテーマに掲げています。その空間に住むと、人間はどうしたくなるかを、その空間に語らせろということです。そこに最終的な問題があるかな。


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